JR九州が誇る観光列車「36ぷらす3」。九州各地を、1週間それぞれ別のコースで運転する豪華観光列車で、その車内は電車に乗っていることを忘れさせるような、落ち着きがありながらも豪華です。
宮崎から大分(宮崎空港駅→別府駅)の土曜日ルート「緑の路」に実際に乗車してきました。本記事では、36ぷらす3の車内の様子を、1号車から6号車まで、写真を用いて隅々まで紹介。さらに、ビュッフェの様子やメニューなど、乗らなくてはわからない36ぷらす3の魅力を、徹底的に解説します。
36ぷらす3に実際に乗車した様子や車内の様子については、Vlogを作成しました。合わせてご覧ください。
「36ぷらす3」のすべての座席を徹底的に紹介!
36ぷらす3は全ての座席がグリーン車で、その独特の車内空間が特徴的です。水戸岡鋭治氏がデザインした36ぷらす3は、木材をあらゆる箇所に使い、日本の和を感じさせる独特の空間が特徴です。
まずは、そんな魅力的な「36ぷらす3」の車内を徹底的に紹介していきます。
1号車は定員3~4名のグリーン個室
1号車は定員が3〜4名のグリーン個室になっています。また、1号車は車両全体の床が畳となっています。各個室ではなく、1号車に入るときに、靴を脱いで上がる形になります。
1号車の車内は、各個室があって通路はちょうど、畳1枚分。個室とはいうものの、すりガラスにすのこ、という感じなので、完全に外からの視線をシャットアウトできるわけではありません。
1号車の個室は大きなソファが1つと向かい側にはベンチがあります。テーブルは最初から広げられたままの、大きなテーブルが設置されています。
1号車を先頭としてみた時、車両の中央より前側は右側が個室、後ろ側は左側が個室になっています。車両の中央で、左右が変わります。
2号車は定員3~6名の大きなグリーン個室
続いては2号車の様子です。2号車は6人用のグリーン個室が用意されています。JR九州としては初の6人用個室です。JR四国の「伊予灘ものがたり」号でも6人用の個室が用意されました。最近では、この大人数の個室が一種のトレンドになっている感じですね。
6人用の個室の様子です。思っていたより、やや狭いという印象を受けました。6人用の個室は、4人〜6人で使用できるため、4人程度での利用が最も良い気がします。
片側(1号車側)は、青色を基調としたソファ席になっていました。この片側に大人が3人座るとなかなかきつそう…
3号車側の座席の様子です。3号車側の座席は、座席が色分けされており、どこからどこまでが自分のスペースなのか分かりやすい。連続したソファながら、3色に色分けされているのでみていて楽しいですよね。
3号車の半分は2人向けのグリーン個室
3号車の半分は2人向けのグリーン個室になっています。787系にもともとある、セミコンパートメント座席をフル活用した形になっています。
787系のセミコンパートメント座席は4人用のコンパートメントですが、この36ぷらす3では、その4人ようコンパートメントを2人用のグリーン個室として販売しています。
もちろん、単にコンパートメントを人数削減のうえ販売している訳ではありません。コンパートメント内のテーブルは木目調のものに取り替えられ、窓枠の障子なども新たに設置。そしてライトも和のテイストに合うようなものに変更されています。
座席はもともとの、普通車のようなシートから完全なソファ席へと変更されています。もともと、2人がけの座席幅だったところに1人用のソファを設置しているので、かなり座席幅は広いです。
窓枠などは他の車両と同様、木を使ったものに変更されています。また、障子が貼られ、すだれも設置されています。
さらに、各個室にコンセントが2口づつ設置されています。1人1口のコンセントが使用できるようになっているのがこの36ぷらす3の特徴の1つです。
5号車は座席タイプのグリーン車
3号車の半分はビュッフェ、4号車は「マルチカー」としてラウンジになっています。そのため、この2両については後ほど紹介します。
続いては通常のグリーン車となる5号車です。JR九州が在来線特急のグリーン席を新たに設ける(改造含む)のは、2017年の特急「ハウステンボス」改造時以来でしょうか。
5号車のグリーン車の様子です。5号車のグリーン車は、「36ぷらす3の中では通常のグリーン車」です。
座席の設備などについては、後ほど詳しく解説します。5号車の座席は九州新幹線800系や西九州新幹線N700S系などをモデルとした座席になっており、九州各地のD&S列車でみられるタイプの座席になっています。この辺りは、座席で差別化するわけではなく、座席周辺および車内設備全体で差別化して、グリーン車として販売しているようです。
6号車はグリーン車で畳になっている
最後に6号車のグリーン車の様子です。6号車のグリーン車は床が畳になっています。畳の上に座席があり、この座席自体の機能は5号車のグリーン車と全く同じです。
車内の様子です。写真では「よくみないと畳だとわからない」ような状態です。ということで、よくみてみましょう。
確かに、畳ですね。ただ、おそらく列車特有の耐火基準などの問題もあり、ちょっと特殊な畳が使用されていると思われます。
実際に乗ってみると、畳の匂いがして足の感触が完全に畳。これはいい。実際に乗って体験して欲しいのがこの6号車です。
6号車のグリーン車の座席です。こちらも、5号車と座席の機能自体は同じです。九州新幹線・西九州新幹線の座席をもとにカスタマイズされています。
後ろから車内の様子を見るとこんな感じ。座席のモックアップがカラフルですが、背後から見るととても落ち着きがあります。乗っていて、カラフルな座席が気になることがないようなデザインが気が利いていると僕は感じました。
また、6号車の運転台よりは壁と暖簾で仕切られており、前面展望を楽しむことができるデザインにはなっていません。
6号車の運転台すぐ後ろの部分は、畳を感じることができるフリースペースになっています。
787系はもともと、運転台がやや高い位置にあり窓も高い位置にあるため、前面展望を楽しむことができるような構造にはなっていないからでしょう。
グリーン車の座席の様子を徹底的に紹介!
ここからは、グリーン車の座席の様子を徹底的に紹介します。36ぷらす3では、5号車と6号車がグリーン車となっています。5号車の床は木目調、6号車の床は畳になっている点で異なりますが、座席自体は同じです。
座席は西九州新幹線のN700Sとほぼ同じ
座席は西九州新幹線のN700S系や九州新幹線の800系、そしてその他、多くのJR九州のD&S列車の座席とほぼ同じものが採用されています。
座席の様子です。座席は2人がけの座席と1人がけの座席がそれぞれ並んでいます。2人がけの座席は、中央にテーブルの収納スペースがあるため、肘掛けは上がらない構造になっています。
1人がけの座席です。僕が乗車した日は向きの都合で(6号車を先頭として走っていたため)テーブルが通路側にありましたが、もちろん逆向きに走る際はテーブルは窓側になります。
座席はしっかりリクライニングします。もともとそれなりに倒れているため、最初の状態でも十分快適に過ごすことができますが、グリーン車らしくリクライニングが利用できるのもありがたい。
各座席にはコンセントを設置 テーブルは折りたたみ式で広い
さらに36ぷらす3においては、各座席にコンセントが設置されています。コンセントは西九州新幹線のN700S系と同様、肘掛けの下に設置されています。
スマートフォンなどを充電しながら使うことなどもしやすく、このコンセントの配置はかなり便利です。
続いてテーブルです。後からデビューした西九州新幹線のN700S系や同形式のテーブルを採用したD&S列車では、テーブルはこのサイズ以上広げることはできません。
36ぷらす3では、テーブルがさらに広がります。肘掛けから出してきた状態(つまり、テーブルを折り畳んだ状態)でも使用できるようになっていますが、さらに広げることで広大なスペースとなります。お弁当を食べるときはこの広げた状態、それ以外の、飲み物を置く程度の時は畳んだ状態が使いやすいでしょう。
787系時代にも全席に設置されていた読書灯。読書灯は、36ぷらす3になっても健在です。ただ、読書することは少ないため、正直あまり使う機会は多くはなさそうです。
頭上の荷物だなはふた付 こちらも木目調
36ぷらす3には、荷物置き場もしっかり設置されています。787系の普通車として運転されていた時からある、飛行機のようなふた付きの荷物だなが、現在でも設置されています。
ただし、荷物だなも木目調のデザインに変更され、窓枠部分および天井の木目調と統一感がもたれています。
座席番号が荷物だなの取手の上に書かれています。そしてその上には小さく、36ぷらす3のロゴマークも。
荷物だなの内部の様子です。正直、めちゃくちゃ広いわけではありません。ただし、大きな荷物を持っている場合、デッキに置くことができるのでそこまで苦労はしません。
荷物だなの上の照明の部分にも、36ぷらす3のロゴマークが設置されています。あらゆるところにロゴマークが設置されていますね。
787系の普通車として使用されている時代からあった、車両中央の荷物置き場。窓の設置工事の問題か、ここは座席にはなっていません。乗車時は、ランチ付きコースのお客さんのためのお弁当が置かれていました。
「36ぷらす3」の車内にはWi-Fi設備も
36ぷらす3の車内には、Wi-Fi設備も整えられています。JR九州では、JR四国ほどではないものの車内Wi-Fiの整備が進められており、この36ぷらす3ではデビュー当時からWi-Fiが整備されています。
ただし、特に日豊本線の区間などを中心に、携帯電話のモバイル通信ができない区間があります。車内のWi-Fiはモバイル通信の電波を使用しているため、モバイル通信が使えな場合は車内Wi-Fiも利用できません。
「36ぷらす3」の車内を徹底紹介!九州を、日本をイメージした豪華な車内
36ぷらす3には、観光列車ならではの車内設備があります。グリーン車の座席が豪華というよりは、これから紹介するマルチカー・ビュッフェなどのサービスを一体として「グリーン車」として販売しているのでしょう。
「36ぷらす3」にドレスコードなどはない
JR九州は「ななつ星」などの豪華観光列車を運転しています。その影響もあってか、また全車グリーン車という特殊性もあってか、「ドレスコードは?」という疑問を聞きます。
36ぷらす3はあくまで全車グリーン車の特急列車であって、通常の特急列車のグリーン車に乗車するのと大きく変わりません。したがって、ドレスコードなどはありませんので、自由な服装で乗車できます。
4号車はマルチカーとして開放
36ぷらす3の車内の大きな特徴の1つがこの4号車・マルチカー。ラウンジになっており、乗客全員が自由に利用できる空間になっています。車両の構造の問題なのか理由は不明ですが、僕が乗車した際はこの4号車だけずっと暖かかった。寒い11月に乗車したので、このラウンジカーでぬくぬくしていました。
水戸岡鋭治氏がデザインした車内らしい雰囲気が。木目調の家具で統一され、明るい印象ながらも過度な派手さはありません。鉄道車両の車内とは思えないような巨大なディスプレイがあるのも大きな特徴です。
モニターの横にあるパネルは、モニターを綺麗に覆うことができるカバーにもなっています。僕がこのマルチカーで休んでいる時に、一度だけ客室乗務員さんが閉じていました。
787系の車両中央部には荷物置き場があります。荷物置き場の部分は窓がない訳ですが、ここは窓をくり抜いて作るのではなく、車両中央のソファとして機能しています。
ソファの横には特製のテーブルも設置されています。36ぷらす3の特製のテーブルは、金色で中央に36ぷらす3のロゴがあしらわれている。なかなかいい感じです。
3人がけの座席です。水戸岡鋭治氏がデザインした車両では、この、手前に取手のようなものがついたテーブルが多く見られます。
2人がけのテーブル席です。車内での体験など(僕が乗車した宮崎→大分・別府の場合、梅酒づくり体験など)はこのテーブルで行われます。
また、マルチカーのカウンターの上には燕がいます。門司港・小倉・博多から西鹿児島を結んでいた特急「つばめ」にあやかって、このようなつばめがいるそう。マルチカーでのエピソード紹介で話を聞くまで気づきませんでした。
3号車にはビュッフェ
3号車にはビュッフェがあります。787系が特急「つばめ」として使用されていた時にはビュッフェとして機能していた車両です。天井がドーム状になっており、開放感が他の車両と全くもって違います。
この3号車、もともとビュッフェだった車両が普通車指定席として使われている際は、頭上の網棚が設置できないことを理由に、座席の前後間隔がかなり広く取られていました。そのような特徴的な普通席だったのですが、現在ではこのような形でビュッフェとしての機能を取り戻しています。
ビュッフェで販売されているのは、飲み物がメインです(詳しくは次の節で解説します)。ただ、カレーやうどんなど、一部食事も販売されています。このような食事を、隣のマルチカーでとるのも良いでしょう。
僕はビュッフェで購入したコーヒーを、このマルチカーで飲んでいました。
ビュッフェのメニューは飲み物がメイン
ここでビュッフェのメニュー紹介です。ビュッフェのメニューについて、最新情報は「36ぷらす3」の公式サイトに掲載されています。
メニューは飲み物が中心になっています。ソフトドリンクも36ぷらす3のオリジナルのものがあるものの、アルコール(地酒)が多くなっています。
僕は毎日のようにコーヒーを飲む、コーヒー依存の人間なので、「36ぷらす3」オリジナルブレンドコーヒーをいただきました。カウンター後ろのコーヒーメーカーで自分で淹れる、コンビニのような仕組みになっています。
これ以外にも、カウンター横には大きな冷蔵庫があります。「ソフトドリンクで…」とアテンダントさんに相談したら、「こちらの冷蔵庫を見ていただくとわかりやすいのですが」と案内していただきました。
このように、車内には飲み物などが充実しています。また、お土産品なども充実しています(36ぷらす3のオリジナル風呂敷など)。
36ぷらす3は5日間かけて九州をぐるりと1周
36ぷらす3のルートは5つあります。5日間かけて、九州をぐるりと一周するルート構成になっています。今回、この記事を執筆するために、土曜日の宮崎空港・宮崎→大分・別府のルートに乗車しました。その様子を紹介します。
ご好評であれば他のルートについても記事を作成しようと考えています。
列車名「36ぷらす3」の意味
ここで「36ぷらす3」の名前の由来・意味について。名前は次のような思いから、「36ぷらす3」と名付けられたそう。
世界で36番目に大きい島、九州全県を巡る「36ぷらす3」は、5つのルートに、九州を楽しむ35のエピソードをぎゅーっと詰め込んで、お客さまをお迎えします。
JR九州(九州旅客鉄道株式会社)「36ぷらす3」公式サイトより引用
ぜひ全ルート楽しんで、お客さまご自身に“36番目のエピソード”を語っていただきたい―
そんな想いを込めました。
この列車で、驚き、感動、幸せをお届けし、「お客さま、地域の皆さま、私たち」でひとつになって、
九州は世界で36番目に大きい島なんですね。1日あたり7つのエピソードを用意し、それに加えて「36番目のエピソード」を自分で用意する、最後に「驚き・感動・幸せ」の3つがプラスされ、39「サンキュー」になるそうです。
宮崎空港から日豊本線の海沿いの見ながら延岡へ
36ぷらす3の土曜日コースは、宮崎空港線の宮崎空港駅から発車します。宮崎空港駅に11:10に到着する普通列車(折り返し特急ひゅうが2号)の数分後に続いて、宮崎駅方面から宮崎空港駅へと入線します。
36ぷらす3の宮崎空港駅への入線は11:12頃との情報をキャッチしていましたが、この日は日豊本線が強風で遅れていたため、36ぷらす3も大幅に遅れて入線。11:34ごろと、入線した時点で既に発車の数分前でした。
この36ぷらす3が入線するとすぐに、隣のホームからは特急ひゅうが2号が発車。すぐに続くように、36ぷらす3も発車しました。
今回乗車するのは、別府行きの列車です。全ての号車にわざわざ「グリーン席」「グリーン個室」と、座席クラスの表示がありました。
宮崎駅から宮崎空港駅の間は、観光特急「海幸・山幸」も走っています。
宮崎空港駅を発車後は簡単な放送。宮崎駅から乗車されるお客さんも多いこともあって、宮崎駅を出発した後に記念乗車証の配布などがあります。アテンダントさんが各車両に直接来てくださり、放送だけではなく地声で挨拶してくださいます。
列車は、海を眺めながら走ります。進行方向右側に、海が見えてきます。僕が乗った時はA席が海側でしたが、36ぷらす3は、九州を一周する間で唯一、門司港駅で方向転換をします。そのため、隔週で進行方向が変わることになります。
宗太郎駅で停車!宮崎県から大分県へ宗太郎超え
列車は秘境駅として名高い、宗太郎駅に停車します。宗太郎駅は、下りの宮崎方面の列車が1日1本のみ、上りの佐伯方面も1日2本のみとかなり少なくなっています。下り列車の最終は朝6時台ととても早く、日本一早い終電となっています。
そんな宗太郎駅に臨時停車します。普通列車は上り・下り合わせて1日にわずか3本。そのようなレア度から、なかなか降りることができない駅です。
この宗太郎駅で、実際にホームに降りて10分ほどの散策を楽しむことができます。反対側のホームにも行くことができますが、先頭車両の前までは行けません(ホームの長さの関係)。
歩道橋の上から見た36ぷらす3です。宗太郎駅という超秘境駅に、36ぷらす3という超豪華列車。なかなか感慨深い。
列車は、重岡駅に停車します。重岡駅でも延岡駅と同様、地元の方々がおもてなしをしてくださいます。地元で作られたジャムや紅茶などを振る舞ってくださいました。
重岡駅に停車中の36ぷらす3です。ここでは地元のキャラクターが、一緒に記念撮影なんかもしてくださいます。また、駅長の制服で記念撮影することもできます。
重岡駅では貨物列車と行き違い。この日は日豊本線が強風で遅延していたため、貨物列車が通過するのを待ち、やや遅延して出発です。
車内ではエピソード紹介などのイベントも開催
さらに、走行中の車内ではイベントも開催されます。重岡駅を発車してから大分駅まで、およそ2時間ほどは停車駅もなく(運転停車のぞく)、車内ではのんびりとした時間が流れます。僕の隣に座っていた団体さんは、ほとんどの方がうとうとされていました。
JR九州のD&S列車では恒例ともなっている、オリジナルの飴が配られました。僕はこのときマルチカーにいたのですが、マルチカーにいた僕にも声をかけてくださり、渡してくれました。
大分駅が近づくと、車内では「エピソード紹介」が行われます。この土曜日「緑の路」の、緑にまつわるエピソードをモニターを用いて紹介してくださいます。
列車は大分駅に到着しました。この後、列車は日豊本線を特急「ソニック」ばりに走り、終点の別府へと向かいます。
36ぷらす3の車内の様子や座席の様子、そして土曜日の「緑の路」の車窓の様子については、Vlogを作成しました。こちらの動画も合わせて、ご覧ください。
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