2022年9月23日に「西九州新幹線」が開業しました。
博多から出発し、武雄温泉で在来線特急に接続して長崎まで。この西九州新幹線に実際に乗ってきたので、お得なきっぷやJR九州ならではの綺麗で遊び心のあるN700Sかもめ車内の様子、そして外観のデザインなどを徹底的に紹介していきます。
最近は映像も積極的に撮影しています。ブログと対応した形で動画投稿をおこなっていますので、お好きな方でご覧いただければと思います。
西九州新幹線の停車駅とルート 割引きっぷなど
西九州新幹線は、武雄温泉から長崎までを結ぶルートです。ビシネスで長崎へ、観光で長崎へ、どんな目的にも便利な新幹線です。
西九州新幹線のルートは佐賀県の武雄温泉から長崎まで
西九州新幹線は、かつて特急「かもめ」が結んでいた博多〜長崎間の全ルートが新幹線として開業したわけではありません。途中の武雄温泉で在来線特急から乗り換え、武雄温泉から長崎の間が新幹線として開業しました。
この、他の新幹線から完全に孤立した形になったのは「整備新幹線」と呼ばれるスキームで建設されているためで、佐賀県内の着工は佐賀県が同意しないため不可能だからです(この件については解説すると長くなるので後でボックスで解説します)。
PKBオンライン様の記事から引用させていただきました。この地図を見てもらってわかるように、武雄温泉から新鳥栖または博多までは在来線特急が接続しています。
西九州新幹線内に設置された途中駅は、
武雄温泉・嬉野温泉・新大村・諫早・長崎
の5駅です。駅間距離はかなり短いですが、東海道新幹線での運用を見据えて開発されたN700Sの加速・減速能力をフル活用して、それなりのスピードを出します。
博多から長崎までは武雄温泉駅で特急「リレーかもめ」に接続
先ほども解説した通り、武雄温泉で特急「リレーかもめ」に接続します。西九州新幹線で博多から長崎まで行く場合、この武雄温泉での乗り換えが必須となります(博多から長崎までの直通の特急は廃止されました)。
武雄温泉駅では同一ホームで、改札も不要で新幹線かもめ号に乗り換えることができます。現時点では佐賀県内の着工方針が立っておらず、当面はこの「リレー方式」と呼ばれる対面での乗り換えが続くようです。
博多駅では「特急リレーかもめ 長崎行き」、長崎駅では「新幹線かもめ 博多行き」と案内されています。実際には両者とも途中の武雄温泉までしか行かず、ここで乗り換えることになります。ただし、武雄温泉駅で接続することから一体化して案内されているようです。
「かもめネットきっぷ」がオススメ!それ以外にも早割などJR九州は割引が多数!
西九州新幹線では、割引きっぷが多数発売されています。JR九州は昔から割引きっぷの設定には積極的で、ネット予約も自社で開発するなど、ネット予約を用いた割引きっぷを多く設定しています。
「かもめネットきっぷ」はネットで直前まで購入が可能であるうえ、普通車指定席と普通車自由席で同額、そして普通のきっぷとは異なり変更が何度でも無料です。この「かもめネットきっぷ」を活用しない手はありませんね。
発 駅 | 着 駅 | 大人 | こども | 乗車経路 |
---|---|---|---|---|
博多 | 浦上・長崎 | 4,200円 | 2,100円 | 鹿児島本線・長崎本線・佐世保線・西九州新幹線 |
博多 | 諫早 | 4,200円 | 2,100円 | 鹿児島本線・長崎本線・佐世保線・西九州新幹線 |
博多 | 新大村 | 4,200円 | 2,100円 | 鹿児島本線・長崎本線・佐世保線・西九州新幹線 |
博多 | 嬉野温泉 | 3,710円 | 1,850円 | 鹿児島本線・長崎本線・佐世保線・西九州新幹線 |
佐賀 | 浦上・長崎 | 4,100円 | 2,040円 | 長崎本線・佐世保線・西九州新幹線 |
熊本 | 浦上・長崎 | 6,500円 | 3,240円 | 九州新幹線・長崎本線・佐世保線・西九州新幹線 |
鹿児島中央 | 浦上・長崎 | 12,800円 | 6,400円 | 九州新幹線・長崎本線・佐世保線・西九州新幹線 |
北九州市内 | 浦上・長崎 ※1 | 5,550円 | 2,770円 | 鹿児島本線・長崎本線・佐世保線・西九州新幹線 |
別府・大分 | 浦上・長崎 ※1 | 6,300円 | 3,150円 | 日豊本線・小倉・鹿児島本線・長崎本線・佐世保線・西九州新幹線 |
佐世保 | 浦上・長崎 ※2 | 3,900円 | 1,950円 | 佐世保線・西九州新幹線 |
※全てのきっぷで逆区間の設定あり/有効期間1日/北九州市内発着は小倉〜博多間在来線特急(新幹線利用不可)
また、あらかじめ予定が決まっているなら「かもめネット早特3」がオススメです。3日前までの予約でさらに割引率が高くなります。直前にどうしても変更が必要になった場合、割引率は下がりますが上記の「かもめネットきっぷ」に変更することができます。
発駅 | 着駅 | 大人 | こども | ご利用列車 |
---|---|---|---|---|
博多 | 浦上・長崎 | 3,600円 | 1,790円 | 特急列車普通車指定席・西九州新幹線普通車指定席 |
博多 | 浦上・長崎 | 4,550円 | 2,740円 | 特急列車グリーン席・西九州新幹線普通車指定席 |
※経路:鹿児島本線・長崎本線・佐世保線・西九州新幹線
以下に、かもめネットきっぷの料金比較表を掲載しておきます。
主な区間 | 通常のおねだん | (3日前までの予約) | (7日前までの予約) | |
---|---|---|---|---|
博多~浦上・長崎 | 6,050円 | 4,200円 | 3,600円 | 3,200円 |
通常の値段と比較すると、いかに安いかがよくわかります。
西九州新幹線はJR九州内で完結するため、JR九州のネット予約限定で様々なきっぷが発売されています。また、JR九州のクレジットカード「JRQカード」会員限定で「JR九州ネット予約」で、JR西日本のクレジットカード「J-westカード」会員限定で「e5489」で、それぞれ利用できる「eきっぷ」も西九州新幹線内に設定されています。
eきっぷについては過去の記事で丁寧に解説しています。
新幹線かもめ号の指定席は混雑するので注意!自由席は比較的余裕がある
続いては新幹線かもめ号の混雑状況です。
かもめ号の指定席は混雑します。逆に自由席には比較的余裕があります。武雄温泉から博多までの特急「リレーかもめ」についても同様です。
新幹線というのはもともと、在来線特急より車内の空間が広いです。新幹線かもめ号についても、自由席は2+3の座席配列になっており(後ほど写真を使って詳説)かなり余裕があります。
逆に、普通車指定席はやや混雑します。特に朝夕の混雑する時間帯では、直前では窓側の指定席を確保できない可能性が高いです。特急リレーかもめはもっと混雑します。直前では普通車指定席が満席、ということもあります。
新幹線は普通車指定席、リレーかもめ号は普通車自由席と使い分けるのもありですが、途中の武雄温泉駅での乗り換えがやや不便になってしまいます(歩く距離が長くなるため)。ここは少し考える必要があるでしょう。
西九州新幹線のN700Sの車両の車内を徹底解説!
続いてはこのブログではいつも通り、大量の写真を交えてN700Sの車内の様子を徹底的に紹介していきます。
デザインは水戸岡鋭治氏
N700Sのデザインは水戸岡鋭治氏が担当しました。
「九州らしいオンリーワンの車両」
をテーマに、既存のN700S車両に九州独自のデザインを取り入れています。JR九州の公式発表によると、デザインのコンセプトは次の3点。
- 九州の経済と文化と人を結び、豊かなコミュニケーションを生む
- 「新幹線つばめ」のDNAを持続させ、変化・進化させて「新幹線かもめ」を表現
- 西九州から吹く暖かくて優しい風を世界へ届ける
これらのコンセプトをもとに、外観デザインについては、
- JR九州のコーポレートカラーである赤を配色し、シンボルマークやロゴを配置
- 毛筆の「かもめ」の書体をエクステリアデザインとして配置
内装については、
- 『優しい、明るい、楽しい、心地良い、美しい』をテーマに色、形、素材をセレクト
- 和洋折衷、クラシックとモダンが組み合わされた、懐かしくて新しい空間を表現
するような車内になっています。このコンセプトをもとに、車内の様子を見ていきましょう。
普通車指定席は2+2の配列 800系とほぼ同一座席
西九州新幹線のN700S系にはグリーン車がありません。ただし、普通車指定席と普通車自由席では座席設備が全く異なります。
普通車指定席は2+2の座席配列になっており、かなり快適です。
この普通車指定席の座席は、800系新幹線とほぼ同一です。全席にコンセントが設置されていたりと、少しだけ違う部分がありますがほぼ同じと考えて良いでしょう。
座席は木目調で作られており、落ち着きがあります。2人掛けの座席です。
もちろん、リクライニングもします。ただ、全開まで倒すと結構後ろの人に迷惑な可能性があるので程々に。僕は乗車した時にすでに前に座っていた2人が全開まで倒しており、座席に着くのが少し大変なくらい狭かったです。
N700S(東海道・山陽新幹線)の特徴の1つとして、全席にコンセントを装備しています。この西九州新幹線N700S系についても同様に、全席にコンセントが装備されています。
座席背後です。フックがあり、お土産などをかけておくことができます。
テーブルです。JR九州の特急列車などではよく見るタイプのテーブルで、肘掛けから出てくるタイプです。肘掛けから出てくるテーブルにしては広い。
2つ出すとこんな感じです。写真で見る以上にテーブルは大きいため、食事をしたりパソコン作業をしたりも難なくできますが、西九州新幹線区間は現状、30分もかからないためここで食事をする時間はないかも。
普通車指定席は号車によって座席のモケット(デザイン)が異なるため、この違いも楽しめます。
シェードも長崎の偉人街などを意識したような感じ。ステンドグラスのようなデザインになっています。
普通車自由席は2+3の配列
続いては普通車自由席です。普通車自由席は、東海道・山陽新幹線と同様の2+3の座席配列になっています。座席自体は東海道・山陽新幹線のN700Sと同じものになっていますが、黄色を基調とした明るい色合いになっています。
普通車自由席を前の方から見渡すとこんな感じです。かなり明るい色合いになっているのがわかるでしょう。
2人席。リクライニングもかなり倒れるので快適です。
3人席です。東海道・山陽・九州新幹線のN700系やN700S系と同様、3人掛けの真ん中の席は少し幅が広くなっています。
全席にコンセントが設置されています。肘掛けの部分に設置されており、スマホを充電する場合などには便利です。ただ、西九州新幹線は走行区間が比較的短く、25分程度しかありません。急速充電を使わないとスマホが思うように充電できません。リレーかもめにもコンセントを設置するなど、シームレスな電源確保をしてほしいところ。
座席背後のテーブルです。広々としたテーブルがあります。
普通車自由席のテーブルの方が、普通車指定席より大きいものになっています。ただ、普通車指定席のところで解説した通り、西九州新幹線は25分程度、全然時間がないのでパソコン作業をガッツリやったり、食事をのんびり摂ったりする時間はありません。
N700S系の座席は、頭の部分がかなり凹んでいます。普段であればあまり隣に人が座ってこないのでいいのですが、混雑して隣に人が座ってきた時にはこれはありがたい(どちらかというと、混雑度合いが非常に激しい東海道新幹線区間でのサービス向上を狙ってデザインされたものだと思われます)。
東海道・山陽新幹線の最新鋭の座席で、かなり快適なN700S系の座席をほぼそのまま、カラーリングだけ変えて西九州新幹線に持ってきた形になっています。
N700Sの車内の設備 お手洗いやディスプレイなど そしておしゃれな外装も!
西九州新幹線のN700Sについて、座席以外の車内設備とおしゃれな外観についても取り上げます。
西九州新幹線車内ではWi-Fiも利用可能
西九州新幹線では車内でWi-Fiを利用できます。最近の新幹線では、利用できない新幹線がほぼありませんね。
西九州新幹線では、東海道・山陽・九州新幹線と同一規格のWi-Fi「Shinkansen Free Wi-Fi」が利用できます。嬉野温泉駅付近で実際に計測したところ、ダウンロードが42Mbps、アップロードが23Mbps出ていたので、列車内のWi-Fiにしてはかなり良い数値だと思います。
ただし、西九州新幹線はトンネル区間が多く、一部のトンネルではまだ携帯電話の電波が整備されていない区間もあるようです。区間によってはつながりにくくなり、車内のWi-Fiについても走行位置、および接続人数(≒座席の混雑率)によって変化があるので注意してください。
車内のディスプレイはフルカラーの液晶
N700Sはフルカラーの液晶ディスプレイを搭載しています。情報量が豊富で、個人的にはかなり見やすくて気に入っています。
号車番号と行き先などが表示さます。まあ、西九州新幹線はよっぽど逆方向へ乗らない限り乗る列車を間違えることはないでしょうが(途中での追い越しなどは一切ありません)。
ここはJR九州独自にデザインしている様子はありません。東海道・山陽新幹線の車内ディスプレイとほぼ同じです。
上り列車は博多行きと表示されます。
武雄温泉です。終点との記載はされませんでした。
手荷物置き場なども充実
西九州新幹線には手荷物置き場なども充実しています。
新幹線であるため、大きな荷物を持って乗車してくるお客さんも多くいらっしゃいます。
車内には地元の名産品なども展示されており、JR九州が各地で運転するD&S列車の趣もあります。
お手洗いなどは東海道・山陽新幹線とほぼ同一
お手洗いなどもしっかりした設備があります。本当に最近の新幹線は、いい意味で「電車内」感がないお手洗い、というかむしろ適当な施設のお手洗いより設備が豊富です。
西九州新幹線N700S系のお手洗いはウォシュレットが完備。おむつを帰るための台や子供を座らせておくための台もしっかり完備されています。最近の新幹線は小さな子供連れでも安心して乗車できます。
お手洗いの外部には「かもめ」のデザインがあり、これがまたJR九州らしい。
洗面台もしっかりあります。短い時間なのであまりこの辺りが重要になることはないでしょうが、それでも将来延伸した時のことを考えてしっかりとした設備になっています。
車外のディスプレイ表示(ほぼ)全集 東海道・山陽新幹線のN700Sと同じ
西九州新幹線の方向幕表示は全てフルカラーのディスプレイになっています。
上りの列車は全て「博多」行きと表示されます。
途中の武雄温泉での乗り換えは、特に新幹線の車外ディスプレイには表示されません。
もちろん、英語表記もあります。
各駅停車タイムのかもめ号の行き先表示は、東海道・山陽新幹線での各駅停車「こだま」号と同じ青色になっています。
かもめ号の一部列車は速達タイプで、途中の停車駅が諫早だけになっています。諫早のみに停車など、1駅でも通過するタイプの列車は赤色、東海道・山陽新幹線でいう「ひかり」号と同じ色になっています。
こちらも英語表記がしっかりあります。
武雄温泉から、諫早のみに停車して終点の長崎へと向かいます。
外装はシンプルな東海道・山陽新幹線のN700Sとは対照的!
最後に、西九州新幹線かもめ号の外装を徹底的に撮影してきたので紹介します。
全面はこんな感じ。窓枠周りとライトの周りが黒くなっているのが特徴。A350飛行機のコクピットと同じ感じですね。また、先端部分には「かもめ」のマークがあります。在来線特急では、実際に金属製のモニュメントみたいなものがありますが、新幹線ではそういった突起物が作れなかった、ということだと思います。
行き先表示と、その隣に書道で書かれた「かもめ」。なかなかかっこいいです。
1号車・先頭車両です。デザインが、単なる青の横ラインだけの東海道・山陽新幹線N700Sとは違います。
色々とデザインされており、良い言い方をすれば楽しい列車、悪い言い方をすれば東海道・山陽新幹線のN700Sより「わちゃわちゃしてる」。ちょっとデザイン多すぎ感もあります。
かもめ号のマークは、在来線特急かもめ時代から引き継がれています。
JR九州のロゴ。なんだと思いますが、787系の外部にあるような燕を中心にした丸いマークではありません。
中間車の全景です。ほんとに、いろいろとデザインされています。
号車表記は九州新幹線の800系と同一です。
東海道・山陽新幹線のN700Sでは、この辺りに大きく「N700S」のロゴがありますが、西九州新幹線にはN700Sとの表記がありません。代わりにそのスペースに大きく「かもめ」のロゴがあります。このロゴがとても美しい。
800系を彷彿させるような外観です。これがなかなかいい感じです。
西九州新幹線については、動画も作成しました。
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