東海道新幹線・山陽新幹線・九州新幹線で使用できる「エクスプレス予約」と「スマートEX」。ともにチケットレスで新幹線に乗車できるシステムでありながらも、年会費が無料と有料で異なる。
実際に過去に、「エクスプレス予約」と「スマートEX」の双方を利用してきました。今回はこの、エクスプレス予約とスマートEXを比較し、その違いを解説します。
スマートEXとエクスプレス予約の違い
スマートEXとエクスプレス予約の違いを最初に解説します。最もわかりやすい違いが「年会費が無料か、有料か」ですが、当然、エクスプレス予約には年会費だけの付加価値があります。
年会費がかかるか否か そして割引率が異なる
「エクスプレス予約(EX予約)」は、年会費が有料となります。申し込みはクレジットカード会社経由となるため、クレジットカードが必須です(VISAなどクレジットカードブランドのデビットカードや、プリペイドカードは使用できません)。クレジットカードを発行、その付帯カードとしてEX予約サービスを申し込むことになります。
一方のスマートEXは年会費が無料です。スマートEXに無料の会員登録をし、そこにネットショッピングのような格好でクレジットカードなどを登録することになります。プリペイドカードやデビットカードなども、一部を除き利用できます。
このように、似ているサービスながらも入会申し込みのフローが全く異なります。年会費も無料と有料で異なります。
その代わりに、年会費が有料の「エクスプレス予約」では、割引率が非常に高くなります。最もスタンダードな、直前まで予約可能なチケットレスサービスで比較しましょう。
サービス | 年会費 | 例1)東京〜名古屋 | 例2)東京〜新大阪 | その他の区間はこちらから |
---|---|---|---|---|
エクスプレス予約 | 1,100円 | 10,880円 (▲420円) | 14,230円 (▲500円) | https://expy.jp/product/exic/ |
スマートEX | 無料 | 11,100円 (▲200円) | 14,520円 (▲200円) | https://smart-ex.jp/product/ |
例えば、東京〜名古屋を1年間に2往復する場合を考えてみましょう。(※以前は1往復で元が取れたのですが、2023年9月の価格改定で元が取れなくなりました。東海道新幹線をよく使う僕にとってはとても痛い…)
サービス | 年会費 | 往復のきっぷ代 | 合計 |
---|---|---|---|
エクスプレス予約 | 1,100円 | 43,520円 | 44,620円 |
スマートEX | 0円 | 44,400円 | 44,400円 |
年会費有料のエクスプレス予約の方が、220円ほど安くなりました。年間たった3回、名古屋〜東京を3往復するだけで220円の差です。
このように、年会費がかかるためハードルは高いものの、実はお得に利用できるのがエクスプレス予約です。
ともに学割やジパングの割引は利用できない
今回紹介している「スマートEX」や「エクスプレス予約」では、学割やジパング割引との併用が原則できません。スマートEXには2023年現在、学割は存在しません。ただし、年会費有料の「エクスプレス予約」を利用する場合、特急券のみの効力をもちチケットレスサービスに近い割引が受けられる「e特急券」が利用できます。このe特急券を利用すれば、学割などと併用することができます。年会費無料のスマートEXでは、学割と併用する方法はありません。
学割やジパング割引が必要な場合は、割引証を持参し、駅窓口に行く必要があります。JR東海では最近、遠隔でオペレーターが対応する券売機を導入しましたが、まだまだそのような券売機は少ないです。基本的には「きっぷ売り場」(JR東日本でいう「みどりの窓口」。JR東海は「みどりの窓口」とは呼ばず「きっぷ売り場」と呼ぶ)に行く必要があります。
ただし、JR東海は自動改札機における顔認証カメラの導入試験を進めており、この顔認証カメラが完成した暁には「対象者限定割引などを利用できるようになる可能性がある」としています。窓口業務の運営費を削減し、チケットレスを勧めたいJR側にとって、スマートEXに学割やジパング割引を対応させるのは大きな課題なのですね。
ともにチケットレス予約ができるので便利
スマートEXやエクスプレス予約サービスはともに、チケットレス予約を利用することができます。エクスプレス予約の場合、会員専用のICカードまたは設定した交通系ICカードで、スマートEXの場合は設定した交通系ICカードをタッチすることで新幹線に乗ることができます。
JRのきっぷは飛行機などとは異なり、紙を使うのが基本です。しかし、紙のきっぷは必ず「窓口」または「券売機」などを経由することになり、自由度がない。また、JRの駅のみでの扱いとなります。例えば、JRの駅から離れた場所にいるのに遅い新幹線に変えたいという場合、対応できない。
そんなデメリットを解消するのがチケットレスサービスです。スマートフォンで予約・決済が完了し、予約変更も何度でも無料。チケットレスだからこそ、自由度が高いのです。
今回紹介している「エクスプレス予約」(年会費有料)と「スマートEX」(年会費無料)はともに、チケットレスサービスに対応しているので便利です。
EX予約は年会費が有料であるかわりに割引が充実!
続いては年会費が有料の「エクスプレス予約」サービスについて解説していきます。
EX予約の年会費は1,100円
EX予約サービスの年会費は1,100円(税込)です。最初の2ヶ月間は無料で、2ヶ月後に初めて年会費が請求されることになっています。年会費が有料ですが、ほとんどの商品で年会費無料の「スマートEX」より高い割引率が設定されています。
僕は今回、年会費有料のエクスプレス予約に入会しました。この年会費の元が取れると判断したからです。
年会費がかかるため抵抗がある人は多いものの、実はかなり簡単にもとを取ることができます。1年に最低でも1回、東京〜名古屋を往復する機会がある場合、元が取れる計算になります。東京〜新大阪を往復する場合、さらにお得です。
このように、年会費がかかることに抵抗があっても、意外と簡単に元が取れてしまうので、自分の東海道新幹線利用状況と照らし合わせ、利用頻度をよく考えることが重要です。
早特商品はスマートEXと同様の設定
エクスプレス予約には、早特商品が設定されています。「〇〇日前までの購入で割引」という商品です。
EX予約で割引対象となる早割を端的に挙げると、「グリーン車用」と「長距離用」「複数人数用」の3種類です。
旅行商品などと大きく違うのは、「割引きっぷなのに変更ができること」。EX予約では変更回数に制限がありません。例えば、
- 乗車5日前早特商品を購入
予定が決まったので早特商品を購入
- 乗車3日前時間を1時間早める
予定が早く終わりそうなので、同じ早特商品に変更←手数料なし
- 当日乗車
予定通り、乗車
というように、予約期限までであれば同じ早特商品に変更することが可能です。さらにありがたいのが、乗車直前まで変更が可能です。この場合、通常料金となりますが、割引きっぷをとりあえず予約しておいたのに、追加料金がない(=元々のきっぷが紙くずにはならない)という大きなメリットが。
- 乗車5日前早特商品を購入
予定が決まったので早特商品を購入
- 乗車当日など
(予約期限以降)変更急遽予定が変わったので早特商品から通常のEX予約サービスに変更←手数料なし(早特商品とEX予約サービスの差額は必要)
- 当日乗車
何度でも変更は無料なので、時間に合わせて乗車
旅行会社などで購入した割引きっぷの場合、変更がそもそも不可能で払い戻しをせざるを得ない場合が多い。あるいは、ホテルとセットだったりするとそもそも変更ができず、片道の新幹線のきっぷを捨てて、新たに自前で用意せねばならないことも。EX予約ではその予約自体は別の予約に流用できるため、キャンセル料などがかかりません。また、区間変更も自由なため、例えば旅行自体を取りやめ、使わなくなったのであれば、手数料を払って払い戻さずとも3ヶ月以内の別の旅行や出張に充てることもできます。
EX会員(エクスプレスカード会員)とプラスEX会員の違い お手持ちのクレジットカードで
エクスプレス予約(EX予約)に入会する場合、クレジットカード会社から申し込みをすることになります。JR東日本「えきねっと」やJR西日本「e5489」、JR九州の「JR九州ネット予約」などのように、年会費無料で会員登録をしたうえでクレジットカードを登録するタイプとは根本的に異なります。
例えば三井住友カードを使っているのであれば、三井住友カードへ申し込みをします。この申し込み情報がJR東海へと送信され、JR東海側で処理されて入会が完了することになります。逆にいうと、クレジットカードの付帯カードとしてエクスプレス予約に入会することになるため、支払いのクレジットカードを変更することはできません。
次に紹介する「スマートEX」も無料で会員登録のうえ、クレジットカードを紐づけることになります。ここもまた、エクスプレス予約とスマートEXの大きな違いになります。
スマートEXは年会費無料で使えるチケットレスサービス
続いては年会費無料で利用できるスマートEXサービスの紹介です。
スマートEXは指定席が一律200円引き〜 山陽新幹線区間ではさらに割引も
スマートEXは年会費無料で利用できるサービスです。しかし、先ほどまで紹介していた「エクスプレス予約」と比べると割引率が低くなります。
東海道新幹線の区間では原則として、普通車指定席が一律200円引きとなります。通常期の「紙のきっぷ」で普通車自由席と普通車指定席の差額が530円。300円引きになると、普通車自由席と普通車指定席の差額は230円となります。また、閑散期であれば「紙のきっぷ」の差額は330円となるため、実質的に差額30円で指定席に乗ることができます。
山陽新幹線区間ではさらなる割引も設定されています。山陽新幹線は東海道新幹線と比べてレジャー需要が大きいためです。こちらは区間によって異なる割引が設定されています。
スマートEXにも早特商品が複数設定
スマートEXにも割引は複数設定されています。ただし、EX予約と比べるとやや少なくなっています。
スマートEXで割引対象となる早割は主に、「グリーン車用」と「長距離用」「複数人数用」の3種類です。
早特商品については基本的にEX予約と値段が変わりません。早特商品を使うことが多い(=予め予定が決まった旅行が多い)のであれば、スマートEXでもよいかもしれません。
ただし、スマートEXではEX予約と比べて、繁忙期(年末年始やお盆など)の制限期間が長いです。早特商品を買うことができない場合があるので、注意が必要です。
スマートEXでは「特急券のみ購入」ができない
僕が感じるスマートEXの最大のデメリットが「特急券部分のみの購入ができない」こと。スマートEXでは特急券と乗車券が一体となった商品しか設定されておらず、特急券のみの購入ができません。
通常の使い方では、特急券と乗車券が一体で良い。ただしこれが問題になるのが、例えば
- 特定都区市内の駅から特定都区市内の駅へ行きたい
- 在来線に乗り継ぎたい
- 他の新幹線に乗り継ぎたい
- 学割などが使いたい
場合などです。例えば、東京から名古屋まで新幹線を利用し、その先で快速「みえ」に乗り継いで四日市へ行きたい場合。この場合、スマートEXできっぷを購入できるのは名古屋まで。名古屋で打ち切りで計算し、名古屋から四日市の運賃をICカードなどで別途支払う必要があります。
また、例えば「名古屋市内」の駅である大曽根駅から、東京都区内の駅である赤羽駅まで行きたい場合を考えてみましょう。スマートEXを利用すると、
- 大曽根〜名古屋 200円
- 名古屋〜東京 スマートEX 10,360円
- 東京〜赤羽 230円
となり、合計10,790円となります。これが普通の紙のきっぷの場合、
- 名古屋市内〜東京都区内(無割引)+新幹線指定席 10,560円
となり、スマートEXを使った方が高くなります。このように、「特定都区市内制度」が適用されないため、場合によっては割高になることがあるのです。
例えば、オーストラリアから僕が帰国した際のきっぷです。e特急券があったからこそ、便利に利用することができました。
このように、エクスプレス予約はチケットレスサービス以外でも便利に利用できます。
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