JR九州が運転する観光列車「はやとの風」。この「はやとの風」はまもなく2022年3月をもって引退することが決まっています。
引退間近となった特急はやとの風に今回、乗車することができました。まもなく引退となる特急「はやとの風」、今回は予約方法やダイヤなどは抜きにして、実際に乗ってきた様子をレビューします。
特急「はやとの風」の車内や外観
まずは特急はやとの風の外観や内装をご紹介します。水戸岡さんがデザインした、JR九州の観光列車らしさもありますが、それより、外観が黒いのが印象的。これがなかなかいいんです。
シックな見た目が印象的な外観 レトロな駅舎と非常にマッチ!
特急「はやとの風」の外観はひとことでまとめると「黒い」。これが黒いんです。
真っ黒の外観で、たとえば「ゆふいんの森」とかに代表されるような、外観の華やかさはあまり感じられません。
前面のデザイン、特に運転台の窓の下の部分にある「はやとの風」や「147DC」との表記は、同じ肥薩線を走り、鹿児島中央から熊本までの観光列車コースを形成していた「いさぶろう・しんぺい」と統一されているような感じがします。
特急「いさぶろう・しんぺい」は2022年現在、肥薩線が不通となっている影響で、門司港と博多の間で運転をしています。こちらも実際に乗ってきて、レビューしていますのでこちらの記事もご覧ください。
実際に乗り込んでみましょう。
車内もレトロな雰囲気 木を使ったデザインはJR九州らしい
車内はレトロな雰囲気です。たとえば、ライト1つをとっても昔ながらの「汽車」を感じさせるデザイン。そして、木がふんだんに使われており、落ち着きのある車内になっています。
こちらが2号車の様子。2号車の車内は1号車の車内に比べて暗めの色が使われています。僕は1号車の座席の方が好きかな。その1号車の座席がこちら。
1号車の座席です。2号車と比べると明るい雰囲気ですね。
1号車の最前列(10列目)だったので、前はこんなん感じ。基本的にほぼ全ての座席に、肘掛けから出てくるタイプのテーブルが備え付けられているのですが最前列だけはそれに加えてこの、ちょっと飲み物を置けるスペースがあります。
1号車にはコンパートメント扱いの座席もあります。ここは3人以上のグループでのみ発売される座席になります。真ん中にテーブルがあり、さらに肘掛けから出てくるタイプのテーブルもあります。肘掛けのテーブルはなしにして、中央のテーブルをもう少し広げればよかったのに、と思わなくもないですが別仕様の座席を発注する方が面倒だったのでしょう。
テーブルはJR九州の観光列車としては非常にスタンダード。座席中央の肘掛けの部分から出てくるタイプのテーブルです。座席を向かい合わせにして使う場合も使えるように配慮しているのでしょう。
車内販売や展望スペースも
特急「はやとの風」には、車内販売や展望スペースもあります。
車内販売は、販売用のカウンターはなく、ワゴンを置いて販売していました。この特急「はやとの風」が引退して改造され、新たにデビューする「ふたつ星」は3両編成と、もう1両増えて専用のビュッフェ車両が設けられるようです。
僕の経験上、JR九州の観光列車は車内販売を使う人が多い。それも、新しい「ふたつ星」で1両増結されて車内販売の専用スペースも設けられる理由でしょうね。
車内にはガチャガチャが。なかなか面白い演出ではあるなあと。ガチャガチャの引換券なるものがあるそうです(僕は当日の朝、予約して乗り込んだので何も予約等していませんでした)。
先頭部分など、ちょっとした空きスペースには絵画が。これまたJR九州らしい。
吉松側の先頭部分にはベンチスペースがあります。ここは誰でも利用できるフリースペースとなっています。
ベンチスペースに結構居座っている人もいました。長居する人もいたのですが、実際、それは避けたほうが良さげな感じはします。
車内には、JR九州の観光列車には必ずと言っていいほど置いてある、乗車記念証も置かれています。JR九州の乗車記念証も、これでかなり集まりました。
続いてはお手洗いなどの水回りです。蛇口の部分など、昔のままの感じが出ています。ただ、その周辺は木を使って装飾されていたりと、多少のリニューアルはされているようです。
お手洗いは広々としています。ウォシュレットなどはありませんが、便器自体は洋式便器になっています。また、小さなお子様を連れたお客さんでも安心して利用できるよう、ベビーベッドなどもしっかり備わっています。
お手洗いには額縁が掛けられています。JR九州の観光列車のお手洗いには、それぞれの観光列車をイメージする絵が飾られているのが印象的です。
西九州新幹線開業と同時に「ふたつ星」として運転開始予定
今回、18年間運転された特急「はやとの風」は2022年3月に引退します。その後改造され、新たな観光列車「ふたつ星」として運転されます。
運転開始から18年間 まもなく引退へ
特急「はやとの風」は皆さんが思うより歴史が長い。18年間にわたって活躍していました。2004年の九州新幹線鹿児島ルート部分開業に伴って運転が開始されたのです。
南九州の観光列車の先駆けであり、一番最初に運転が開始されたのがこの「はやとの風」です。
運転開始から18年間、まもなく歴史に幕を閉じます。九州新幹線鹿児島ルートの部分開業に伴い、観光列車として運転が開始された経緯があってか、今回、九州新幹線長崎ルート(西九州新幹線)の部分開業に伴う、長崎と佐賀を結ぶ観光列車にリニューアルされることが決まっています。
中には写真なども貼られていたのでブログに掲載することはできませんが、18年間の歴史を書いた写真集も置かれていました。
2022年秋からは「ふたつ星」としてデビュー予定
2022年からは新たな観光列車「ふたつ星」として改造されることが決まっています。
2022年9月23日に開業することが正式発表された西九州新幹線。西九州新幹線が走る武雄温泉から長崎までを結ぶ観光特急となる予定です。
現在は特急かもめ号が何本も行き交っている長崎本線はかなりの絶景エリア。特急かもめ号はビジネス需要が中心のため景色は話題になりませんが、有明海に沿って走る長崎本線はかなり観光需要を取り込めると思います。
新しい観光列車には、本格的なビュッフェスペースなどが設けられ、車内販売も充実するとのことです。デビューしたらぜひ一度、乗りに行きたいと思っています。
実際に乗ってきました
実際に鹿児島中央から吉松まで乗ってきましたので、その様子をレビューします。
鹿児島中央から隼人へ 桜島を見ながら絶景を走る
列車は鹿児島中央を発車し、5分ほどで鹿児島駅に停車します。現在の鹿児島市街地の中心は鹿児島中央で、ほとんどのお客さんが鹿児島中央から乗車していました。
雄大な桜島を見ながら列車は進みます。日本一周旅行でここを通過した時、うわぁ、桜島、雄大だなあって思ったのを思い出します。
鹿児島の名勝・仙厳園を見ながら列車は進みます。この区間を走る特急「きりしま」などは高速で通過していきますが、特急「はやとの風」は少し速度を落として運転してくれます。列車内からも少し内部がみられます。また、スタッフさんたちが手を振ってくれていたのが印象的でした。
隼人駅までは鹿児島本線・日豊本線を走ってきましたがここからは肥薩線へと入ります。いよいよこの特急「はやとの風」の1番の見どころ区間に突入していくことになります。
隼人からは肥薩線 ローカル区間を走り古き駅舎・嘉例川駅へ
嘉例川駅は明治36年(1903年)に開業した駅で、大隅横川駅と並ぶ肥薩線最古の駅。レトロな雰囲気が人気の観光スポットとなっています。この「はやとの風」は嘉例川駅にも停車し、観光の時間があります。
現在はローカル線であり、窓口の営業はありません。木で作られた枠が古さを感じさせます。
もともと窓口、そして駅員さんの仕事場があったエリアは観光のために解放されています。この駅舎、映画「鉄道員(ぽっぽや)」(高倉健・主演)のシーンを思い浮かべますね。2月終わり、ひな祭りの直前ということもあって雛人形が飾られていました。
駅舎自体も古さを感じさせるものであり、なかなかいい感じ。重要文化財として、あえて残されています。
この嘉例川駅に来ると、特急「はやとの風」がどうして黒色を基調としたデザインになているのかがよくわかります。黒色って、なんだか暗い感じがしたけどそれがいい。この嘉例川駅はじめとした、肥薩線内のシックな駅舎ととてもよく合います。
ちゃんと、JRの駅にある名所案内もあります。
ここはちゃんと金属製。おそらくこの看板は、JR九州が発足してから作られものでしょうね。
う〜ん、天気がいいのもよかった。これも重要。同じことの繰り返しになりますが、特急「はやとの風」とその横に並ぶ駅舎、そして周りの緑と空の青。これらのコントラストが非常に良い。
長いホームに、元々は反対側にも線路があったであろうスペース。昔は肥薩線が重要な位置づけだったことをうかがわせます。特に戦時中は、知覧に代表される軍事施設が多数、鹿児島県内にもありました。
列車はさらにローカル線を走っていきます。
2月の終わりであったにも関わらず、列車から見える景色はどうも、紅葉に近いような感じがしました。
山の中を走っていたと思えば次は田んぼの中を走ったり。なかなかいい感じの、雰囲気のある路線です。本当に乗っているだけで観光になる列車です。
戦火の跡が今も残る 大隅横川駅へ
続いて特急はやとの風は、大隅横川駅に着きます。この前に、霧島温泉駅にも停車しますが、ここでは観光の時間等は設けられていません。
大隅横川駅も、嘉例川駅と同様に古い駅舎が現存する駅です。ここもまた、いい雰囲気。
駅舎自体は嘉例川駅と似ているような感じもします。
大隅横川駅にもひな飾りがありました。
大隅横川駅もまた、戦前からある駅です。1945年、米軍機による機銃掃射を受けており、この跡が今でも駅舎の柱に残っています。戦火にも耐えた駅舎です。
やっぱり、黒の車体が似合いますね。
観光列車以外はローカル線の様相を呈しています。これは、帰りの列車(特急はやとの風3号)での交換の様子です。観光列車「特急はやとの風」を除いては、1両のディーゼルカーが走るだけのローカル線です。
大隅横川駅には、線路を横断する踏切もあったのでここから列車を撮影しました。なかなか絵になります。
昔のタブレットを使っていた跡もあります。
景色が開けて列車は吉松駅へ
大隅横川駅を過ぎると、あとは長時間の停車はなく終点の吉松へ向かいます。
展望席にやってきました。天気がいいとこの解放感。なかなかいいですよね。
この解放感、そして、これだけ大きな窓から見える緑と青のコントラストがなんとも言えない美しさです。
長閑な風景を見ながら列車は走っていきます。これがなんとも美しい。
川を渡って、まもなく列車は吉松に到着となります。
終点の吉松に到着です。吉松駅も駅舎などを撮影したかったのですが、いろいろあって(←日記参照)撮影していません。
元々は、肥薩線のこの先、熊本までを結ぶ特急「いさぶろう・しんぺい」と連絡し、観光列車ループを形成していました。が、肥薩線の一部不通に伴い、このループができなくなっています。そのため、特急「はやとの風」の乗客も、そのまま折り返す乗客が多かったように思います。
この先、鉄道は不通となっています。JR九州としても、営業赤字がかなり大きかったゆえに復旧の費用を出すことができないそう。この先どうなるのか、現在協議中です。
というわけで、鉄道らしい、というか昔の「汽車」を感じさせる快適な旅でした。
コメント