名古屋と高山・富山を結ぶ特急「ひだ」。名古屋と新宮・紀伊勝浦を結ぶ特急「南紀」。JR東海が発足してから使われ続けていた「キハ85系」は、2023年をもって引退しました。
![[2023年6月引退]キハ85系・特急ひだ/南紀号の車内など](https://fuwafuwasky.com/wp-content/uploads/2023/07/20221217_051044522_iOS-1024x576.jpeg)
この記事では、2023年をもって引退するキハ85系の取材をしてきました。車内の様子や今後のことについて、解説します。
JR東海の非電化路線で活躍したキハ85系
キハ85系は特急「ひだ」「南紀」として運転され、JR東海における気動車特急の全てを担いました。アメリカ・カミンズ社製の強力なエンジンを搭載したことにより、「気動車は遅い」というイメージを覆します。強力なエンジンにより、電車と同程度の加速力・最高速度を誇りました。
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特急「ひだ」としてデビュー 特急「南紀」にも導入
キハ85系は、国鉄の分割民営化以降、JR東海が最初に手をつけた仕事と言ってもいいでしょう。高山本線を電化するという話が国鉄時代にはありましたが、JRという民営会社となったJR東海は本当に電化が必要であるかを検討しました。
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その結果、海外製の強力なエンジンを使用した車両を作れば、電化するより費用を抑えて高速化ができると判断。そこで導入されたのがこのキハ85系です。デザイン面でも軽量化を図るため、ステンレス鋼を用いた車体で無塗装。JR東海のコーポレートカラーであるオレンジ色のラインを入れており、このデザインはJR東海における特急車両のスタンダートとなりました。
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特急「ひだ」号に導入され、愛知県・岐阜県の人々に「国鉄分割民営化の成功」を体感させたそう。その成果を元に、特急「南紀」号にも導入されることになりました。
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最高速度120km/hを達成
JR東海の発足後、特急ひだ号にキハ85系が導入されたことにより、最高速度は東海道本線で120km/hと、他の電車に引けを取らない速度まで向上しました。当時、最高速度が100km/hだった特急ひだ号は、キハ85系の登場により120km/hまで引き上げられました。
高山本線や東海道線沿線に住む人たちは、今までの古い気動車で運転されていた特急がこのキハ85系に変わったのを見て、国鉄分割民営化が成功だったと確信した、なんて話もあります。
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特急ひだ号は通称「大阪ひだ」として1日1往復、大阪駅まで乗り入れていました。現在も後継のHC85系が大阪に乗り入れており、JR東海の「大阪ひだ」のJR西日本区間乗り入れは続いています。
最大10両で「ワイドビューひだ」として親しまれた
特急ひだ号には、「ワイドビューひだ」という愛称が付けられていました。「ワイドビュー」の名の通り、窓から見えるワイドな景色が人気で、座席はハイデッカーになっていました。
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また、気動車ならではの編成の自由度を活かした編成も人気でした。最大10両で運転されたキハ85系は、先頭車両が3両や4両連続することもありました。
特急「ひだ」「南紀」キハ85系の車内の様子を紹介
引退する直前の2023年6月、キハ85系の特急「南紀」に乗ってきました。その際に車内の様子を撮影してきたので、紹介します。
ハイデッカー構造になっているキハ85系
キハ85系の特徴はハイデッカー構造です。座席は2種類のモックアップがあります。
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青を基調としたモックアップの座席です。
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オレンジを基調としたモックアップの座席です。こちらの座席の方が「特急ひだキハ85系」のイメージですね。
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「ワイドビュー」の名前の通り、観光利用が圧倒的に多い高山本線を走る特急列車として、景色が楽しみやすいように設計されました。座席は通路から一段上がった場所にあります。
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座席はリクライニングシートになっています。新しく登場したHC85系と比べて、座席の座面はふかふかなイメージです。
普通車にもテーブルやフットレストなどを完備
特急列車としては標準となりつつあったテーブルに加え、フットレストなどの設備も備えています。
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座席背面にテーブルが設置されています。
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テーブルは十分な広さがありますが、最新のHC85系と比べるとやはり小さい感じがしてしまう。ちなみにHC85系では全席にコンセントが設置されましたが、キハ85系にはコンセントはありません。
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前の座席にはフットレストも装備されています。
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フットレストはJR初期の車両でよくみられましたが、グリーン車はより豪華なフットレストへ、普通車は廃止の方向へ進んでいます。
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車内の様子です。頭上の荷物置き場もしっかりと確保されています。
Wi-Fiなども搭載していたキハ85系
キハ85系は、観光路線として人気な高山線や紀勢線を走りました。特に高山線は、外国人観光客で溢れる路線です。
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そこで、特急しなの号には設置されていないWi-Fiをかなり早い段階から装備。外国人観光客にはWi-Fiの需要があった時期です。
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お手洗いや洗面台周りもとても広く、長時間の乗車でも安心してくつろぐことが出来ます。
普通席での前面展望や先頭車の大量連結など、キハ85系ならではのシーンも
キハ85系の特急ひだ・南紀では、先頭車両で前面展望を楽しむことができました。
前面展望が楽しめるキハ85系
特急ひだ号は、普通席でも前面展望が楽しめます。特急しなの号は、前面展望が楽しめるのはグリーン車のみです。主に高山→名古屋の列車で楽しめますが、ひだ号は編成によっていろいろと違うので、実際に駅で確認すると良いでしょう。
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新型のHC85系にはこの前面展望は用意されていません。
気動車ならではの自由な編成も
キハ85系では、気動車ならではの自由な編成が見られました。記事を作成するために特急「南紀」に乗車した際も、5両編成のうち4両が先頭車両でした。
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先頭車両が続く風景は鉄道ファンからは人気でした。
キハ85系は京都丹後鉄道に譲渡した編成以外、廃車へ
最後に、今後のキハ85系について。現在は2編成4両が京都丹後鉄道に移籍しており、今後は京都丹後鉄道で予備編成として使用されるようです。
2023年6月をもって引退・廃車へ
キハ85系は、2023年3月をもって高山本線の特急「ひだ」から引退し、その役割をHC85系に引き継ぎました。特急「南紀」からは2023年6月をもって引退し、2023年7月1日からはすべての特急「南紀」がHC85系で運転されます。
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JR東海の気動車特急を、30年近くにわたってすべて担い続けたキハ85系ですが、ついに引退します。
京都丹後鉄道で一部の編成を導入 KTR8500形として活躍へ
キハ85系は京都丹後鉄道に2編成・4両が譲渡されました。1編成が特急車両の予備車両、1編成は部品取り用の車両として使われるそうです。
京都丹後鉄道には以前に乗りに行ってきました。2023年11月にも足を運ぶ機会があり、車両基地に置かれているのを発見したので撮影してきました。
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京都丹後鉄道は観光列車も走っていますが、現在入ってきている情報によれば、観光列車に改造される予定などはないようです。
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京都丹後鉄道では、KTR8500形として線内の特急予備車として使用されるようです。現在、線内の特急および一部京都乗り入れの特急として活躍している「丹後の海」車両は、運用はやや多めであまり余裕がないため、その予備車として導入したと考えられます。
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隣には長年放置され、朽ち果てたタンゴエクスプローラー。かつては新大阪まで乗り入れていた車両とは思い難い様相です。キハ85系改め、KTR8500形はこんなふうにならないといいのですが。
ハイブリッド車両・HC85系で統一
現在、特急「ひだ」「南紀」はハイブリッド車両・HC85系に統一されました。全席にコンセントが配置されるなど、サービス面ではやっぱり、新しい車両ならではのサービスアップがあります。
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キハ85系の後継として、大きな窓などの特徴を引き継ぎながらも、ハイブリッド車両とすることで定騒音化などを実現。
こちらのHC85系の記事はご好評をいただいています。
また、HC85系のグリーン車にも乗ってきました。それぞれレビューしていますので、ご覧いただければと思います。
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