JR東海が新たに導入したHC85系。ハイブリット式の車両で、電化されていない区間でも電化された区間と同様の性能を発揮することができます。
2022年12月からは富山への乗り入れも開始され、高山線全線で運転されています。今回はこのHC85系に実際に乗ってきたので、その様子を徹底的に紹介します。
グリーン車の様子は別の記事で紹介していますので、合わせてご覧ください。ちなみにHC85系は2023年のブルーリボン賞を受賞することになりました。
特急ひだ号の自由席の混雑 自由席でも座れるか?を徹底解説
まず初めに特急ひだ号の混雑状況を徹底的に解説します。「自由席でも座ることはできる?」という疑問にお答えします。
特急「ひだ」混雑状況 | 普通車指定席 | 普通車自由席 |
---|---|---|
平日 (全区間) | やや空いている 直前でも窓側座席で取れる | やや混雑 早めに予約した方が安心 |
土休日 (全区間) | やや混雑 早めに予約した方が安心 | やや混雑 早めに予約した方が安心 |
観光需要が大きい列車 土休日は注意
特急ひだは、観光需要の大きい下呂・高山方面へと向かう列車です。下呂温泉や高山の観光へ行くお客さんが使うため、土日は混雑します。
土日は指定席も比較的埋まります。2022年現在はコロナ禍で外国人観光客が激減しているため直前でも指定席を確保できる可能性があります。それでも、つまり日本人のお客さんだけでも、朝夕の観光に便利な時間帯は座席がやや埋まります。2023年現在、外国人観光客が戻ってきたため再び混雑しています。自由席は、始発駅から以外の場合、座れない可能性もあります。
土日に利用する場合は特に注意が必要です。また、お盆やゴールデンウィークなどはかなり増結されることで有名な特急「ひだ」ですが、増結されてもなお、座席が埋まることがあるので注意が必要です。JR東海としても最大10両編成に対応させ、指定席発売後も機動的に増結などで対応していますが、やはり混雑するときは混雑します。
特急「ひだ」号の主要区間における料金表を掲載しておきます。所要時間と値段を考慮したコスパから、普通車でも構わないので指定席を確保するのがオススメです。
区間 | 普通車自由席 | 普通車指定席 |
---|---|---|
名古屋〜高山 (約2時間30分) | 5,510円 | 6,030円 |
名古屋〜下呂 (約1時間40分) | 4,100円 | 4,620円 |
高山〜富山 (約1時間30分) | 2,840円 | 3,360円 |
岐阜〜高山 (約2時間10分) | 4,420円 | 4,940円 |
今後、インバウンドが回復してきた際はさらに注意
2023年現在、インバウンドが復活しつつあります。これにより、特急「ひだ」は再び混雑を取り戻しています。
外国人観光客のみが使用できる「JAPAN RAIL PASS」は、特急や新幹線の指定席を無制限に予約できたため(現在は制限がついています)、この特急「ひだ」の指定席は半数以上が外国人のお客さん、なんて状態もよくあります。
実際、2022年12月に富山から名古屋まで特急「ひだ」に乗車した際、富山から高山の間では普通車指定席が満席でした。周りはほとんどが外国人観光客で、半数以上のお客さんが高山で下車されました。富山発着の特急「ひだ」は本数は少ない。しかし実は、東海道新幹線のぞみ号で名古屋へ行き、そこから特急ひだ号で高山へ行くより、北陸新幹線かがやき号で富山へ行き、そこから特急ひだ号で高山へ行くほうが早い。このルートなら、最速列車でも「JAPAN RAIL PASS」が使える(東海道新幹線のぞみ号はJAPAN RAIL PASSが使えない)というメリットもあります。
そんな背景があり、特急「ひだ」の高山〜富山間は、末端区間で需要がすり減っていくイメージではなく、車両数が少ないが故に混雑する区間だと思ったほうが良いでしょう。
平日は自由席でも問題なく座ることができる
多少の通勤・通学需要がある美濃太田や鵜沼へのアクセスは名鉄が直線的に繋いでおり、岐阜駅を通って大回りするJRは圧倒的に不利。
そのような背景があり、特急「ひだ」の通勤・通学利用は圧倒的に少ないのが現状です。平日は自由席でも十分に座ることができます。
また、高山駅周辺でも通勤・通学需要を拾っています。高山駅周辺エリアは普通列車の本数が極めて少ないため、特急ひだ号の自由席特急券には「特定特急料金」が設定されています。特定特急料金は、競合区間がある場合や、乗客の利便性を考慮した際に通常の料金より値引きする特急料金で、高山周辺では普通列車が少ない代わりに特急列車に安く乗ることができるようになっています。
普通車の車内・座席設備はN700Sとほぼ同じ
車内の座席設備などはN700Sとほぼ同等のものになっています。N700Sの、洗練された座席と同じ快適性です。
なお、グリーン車の様子は別の記事で紹介しています。
N700Aと同等の座席で快適
普通車の座席はN700Aを基調としたデザインが採用されており、かなり快適な座席です。ただ、新幹線とは色が異なります。
車内に入るととても明るい印象を受けます。「座席の色彩は、沿線の紅葉や祭り、花火のイメージをグラデーションで表現。また内壁は、明るい茶色の木目調としました。」と公式サイトに掲載されている通り、オレンジを基調とした座席になっています。
座席自体は実際に座ってみると、N700S新幹線とほぼ同じ座席だったと思います。肘掛けなどがほぼ、N700Sと同じです。N700Sは、JR東海が開発した新幹線の完成形ともいっていいほど洗練されている。そのN700Sの座席が、この特急ひだ号にも導入されました。
座席間隔も十分にあります。東海道新幹線とほぼ同じ座り心地・快適性と言って差し支えないでしょう。
花火をイメージしたモケットがとても印象的です。HC85系はまだ新車であることもあり、かなり清潔感があります。
グリーン車の座席はさらに豪華です。グリーン車は普通車より落ち着いた雰囲気で、やはり乗り心地も全然違います。
全席にコンセントを装備
HC85系では、全席にコンセントが設置されました。コンセントが肘掛けに設置されているところも、N700Sと同じですね。
肘掛けにコンセントが設置されていることで、スマートフォンなどを充電しながら使う、なんてことがとてもしやすい。前の座席の部分に設置されている、などよりは圧倒的に利便性が高いのです。
背面テーブルもしっかり設置されています。こちらのテーブルもN700Sとほぼ同じ規格のような感じです。
以前の特急「ひだ」はテーブルが小さかったのですが、今回は新幹線と同様の大きなテーブルが用意されました。パソコン作業をしたり、あるいは食事をしたりということがよりしやすくなりました。
新幹線に近い座席設備になったものの、観光利用が多い高山線での運転を想定して快適な座席が用意されています。
車内にはWi-Fiも完備
以前の特急ひだ号でもWi-Fiが完備されていましたが、もちろん、HC85系にも完備されています。車内Wi-Fi設置の流れは、特に有料列車では急務ですね。
僕が乗車した日は比較的お客さんが少なかったこともあり、速度は早かったように思います。列車の中のWi-Fiとしてはかなり優秀でした。
実際に計測したところ、アップロード・ダウンロード共に7.0Mbpsの速度が出ていました。ただし、特急ひだ号は途中、山間の区間を走行するためネットワークの速度は大きく変化します。また、接続している人数によっても変化するので注意が必要です。
最新の列車ならではの設備 ほぼ「電車」
HC85系の導入によって、車内の設備も最新のものになりました。新幹線と比べて観光客が多いため、観光利用がしやすい設備が整っています。
お手洗いはウォシュレットも完備
お手洗い・洗面台なども最新の設備です。洗面台の設備などは新幹線などとは少し異なり、柔らかなデザインになっています。
洗面台は明るく、広々しています。木目調のデザインと、石のデザインの両方が採用されており、温かみがあります。
お手洗いの様子です。最近の特急列車はバリアフリーもしっかり対応しており、車椅子利用なども考えて広々としています。
また、着替えなどで利用できる台も用意されています。観光利用が多いので、これはかなりありがたい。
また、ウォシュレットも完備されています。僕の中での基準として、車内のお手洗いでウォシュレットが使える列車はかなりいい、と判断しています。
手荷物置き場や車内の電光掲示板なども設置
観光客の利用に最大限配慮し、手荷物置き場や電光掲示板などもしっかり設置されています。この点は新幹線よりかなり充実しています。
大きな荷物を置くための場所が、車端部に用意されています。新幹線と同様に、大きな荷物を頭上の棚に上げることもできますが、重たい場合などはここを使用できます。
車内には大きなフルカラーのディスプレイも装備されています。もちろん、複数の言語に対応したものになっています。
僕が乗った列車では、前方の踏切で非常停止ボタンが扱われたため、急停車が起きました。急停車の表示はなかなかレアなのでは。
JR東海の列車としては珍しく、車内には沿線の工芸品などの展示があります。観光利用が多い路線ならではです。
外観も完全に電車の構造
外観の設備なども電車と同じような感じ。行き先表示は、東海道新幹線の行き先表示に近いように感じます。
行き先表示もフルカラーで美しい。こちらは特急ひだ15号 高山行きの表示です。列車番号、座席種別、号車、行き先などがわかりやすく表示されています。
こちらが特急ひだ14号 富山→名古屋の表示です。富山発着の編成は、増結時のために9号車と10号車の2両で運転されています。
ハイブリット車両であり、動き方は気動車ではなく電車。ということで、車両番号も電車の番号です。
新型のハイブリッド車両で環境に優しい
今回導入された、この特急「ひだ」の特徴は「ハイブリッド式」であるということです。
HC85系は最新鋭のハイブリッド車両
HC85系は、エンジンで発電した電気を使って動く車両。非電化区間である高山線でも、電車と全く同じ性能を発揮することができます。
広告や車両のデザインでもハイブリッドを前面的に押し出しています。
車内環境はほぼ電車
特急ひだ号に導入されたHC85系は、エンジンを使って発電し、その電気で車両が動いています。そのため、電車の仕組みだけではなく車内環境なども電車そのもの。
車内のディスプレイには、ハイブリットを強調する表示もあります。
車内も電気で動いていることをフル活用した明るい車内です。
音も静かで環境にも優しい車両 特急南紀号にも投入
実際に乗車してみて分かったことが、とても静か。エンジンで車体を動かすわけではなく、エンジンで発電した電気で車体を動かすので、ディーゼルカーが動く時の独特の騒音がありません。
また、環境性能も25%ほど向上しており、燃費向上に加えて環境への負荷軽減にも一役買っています。
2023年7月1日からは、特急南紀号の全ての列車がHC85系に置き換えられました。今後、高山線だけではなく、関西線・紀勢線にも活躍の場を広げることになります。
グリーン車の様子については別の記事や動画でも紹介しているのでご覧ください。
新しい特急ひだ号HC85系の導入でさらに快適になった高山・下呂への旅。新しい特急ひだで足を運んでみてはいかがでしょう。
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