名古屋を中心に、中京圏を走る「名鉄」(名古屋鉄道)。名鉄が導入しているのが「一部特別車」というシステムで、特別車両券「ミューチケット」を利用することで指定席を利用することができるシステムです。
愛知・岐阜に住んでいる人からしたら当然のように使うこの「ミューチケット」システム、でもそれ以外の地域から名古屋に行く人にとっては、
- 特別車って何?名鉄特急って結局、特急券が必要なの?
- 一部特別車って、東京の普通列車グリーン車のようなもの?座席は違うの?
- どうやって指定席券「ミューチケット」を購入したらいいの?
など、疑問が多いのですよね。本記事では、名鉄特急を5年以上使い続けたユーザーが、「一部特別車」「ミューチケット」というシステムについて、わかりやすくかつ詳細に解説します。
首都圏JRの普通列車グリーン車のように、追加料金を払うことで特別な車両に乗ることができるよ!首都圏JRとは違って座席指定だってできるし、値段も安いからうまく使えばかなり快適に移動できる!
名鉄の指定席券「ミューチケット」とは?
ミューチケットとは、名鉄の「ミュースカイ」の全車両、「快速特急」「特急」の一部車両に連結された「特別車」に乗車するためのチケットです。首都圏のグリーン車に近いですが、駅もしくはネットで購入すれば座席が指定できます。
特急料金なしでも乗れる、名鉄特急
名鉄では「特急」や「快速特急」を運転していますが、JRの特急列車とは異なり乗車券・交通系ICカードのみで乗車することができます。名鉄には主に次の種別があります。
- ミュースカイ:中部国際空港アクセス用の列車で、基本的に中部国際空港駅を発着。全車指定席で、停車駅は最も少ない。通勤時間帯は岐阜・新鵜沼行きもあるが、昼間帯は名古屋〜中部国際空港(途中停車駅は名古屋付近の金山・神宮前の2駅のみ)。
- 快速特急・特急:一部特別車で、名鉄の幹線を走る。乗車券のみで乗れる一般車が連結されている。快速特急の方が停車駅は少ない
- 快速急行・急行:全車一般車。早朝に特別車ありの列車で運転することもあるが、その場合特別車のドアは開かず、特別車は空っぽで運転される。【2021年3月追記】2021/3/15から朝の時間帯の一部急行列車も特別車を販売することになったそうです。
- 準急・普通:全車一般車。こちらも特急車両で運行されることが稀にあるが、特別車は乗車できない。
ミューチケットは車内で購入できます。また、現在では座席指定もできるようになりましたが、料金が割高となっています。料金体系については次の節で解説します。
◉「ミュースカイ」→空港アクセス特急で、追加料金必須!
◉「快速特急・特急」→追加料金必要な車両とそうでない車両がつながっている
◉それ以外→追加料金が必要な車両はない
2024年3月以降の「ミューチケット」料金改定
名鉄では、2024年3月に運賃改定を行いました。これに併せて、特別車両券「ミューチケット」も値段の改定が行われました。かつては「ミューチケット」の料金は変動がなく、一律料金(改訂直前は360円)となっていましたが、紙のきっぷは値上げされた上で、インターネットでの予約は料金が変動するようになります。
料金種別 | 値段 |
---|---|
基本料金 | 450円 |
閑散時間帯割引料金 (平日9時台〜16時台および土休日全時間帯) | 300円 |
車内精算料金 | 500円 |
このようになります。基本料金が450円と値上げされる一方で、需要に応じて値下げとなる場合もあります。閑散時間帯割引料金が名鉄ネット予約サービス限定で新たに設定されます。閑散時間帯割引料金の注意点として、
- ネット予約のみで適用されること
- 中部国際空港発着の場合には適用されないこと
があります。この点には注意が必要です。
さらに、車内精算の場合、大幅な値上げとなります。要するに「あらかじめ買っておいてくださいね」ということ。また、500円というキリの良い数字にすることで、お釣りなどのやり取りが面倒な車内精算の負担を少しでも軽くする狙いもあるでしょう。車内精算では割高になるシステムは、首都圏JRのグリーン車や特急列車でもすでに採用されているシステムです。値上げされる一方で、車内でも座席の指定が可能になります。
また、今までは駅窓口でしか購入ができなかった「乗り継ぎミューチケット」についてもインターネット予約で購入できるようになります。
名鉄の特別車は、予約は結構埋まるものなの?
朝の時間帯と夕方の時間帯(通勤時間帯)は満席になったりしますが、他は満席になることは稀です。新型コロナウイルスの影響による利用客激減から大きく回復した2021年12月の様子を見ていても、朝の時間帯(具体的には8:00ごろまでに名古屋に到着する列車)の名古屋方面の列車、および夕方の時間帯(具体的には17:30〜18:30ごろに名古屋を出発する列車)の名古屋から離れていく方面の列車は混雑しています。2021年11月にも、満席になっていることがありました。
乗車3分前まで購入可能で、朝夕の通勤ラッシュ時以外は3分前でも座席を確保できることがほとんどです。
しかし、まとまった乗車がある駅(名古屋駅など)をすでに超えている場合、そのまとまった乗車がある駅での発売時間までに既に売れてしまっていることがあるので注意すべきです。
値段が360円と安いこともあり、通勤で毎日特別車を使う人は意外と多い!
さらに名鉄では2019年5月からインターネット予約が開始されました。このインターネット予約を使えば乗車駅発車1分前まで予約することができます。名鉄の駅券売機・窓口等では一切利用できないクレジットカードを使って決済することができるのも魅力の1つです。
ミューチケットを購入するメリットは?
ここまで名鉄の特別車の乗り方などについて解説してきました。では、実際にお金を払って指定席を確保するだけの価値はあるのでしょうか。
名鉄の特別車「ミューチケット」
ミューチケットを買うメリットは主に4つあります。
- 座席が確保される
- トイレが必ず付いている(ちなみに、客室のトイレマークで、トイレに人が入っているかも確認できます。新幹線にはないシステム!)
- 座席が広く、リクライニングが使える
- Wi-Fiが使える
座席についてですが、一般車(乗車券のみで乗車可能)は通勤列車(地下鉄みたいな感じです)の座席。一方、特別車は新幹線のような座席です。快適さが違う。
これが特別車の車内の様子。新幹線と近い座席で、一般的な特急と言えると思います。手前と一番奥にちょっと写っていますが、空港特急としても使われるのでスーツケース等の大きな荷物を置く場所もあります。
また、2022年現在、特別車では全列車で車内Wi-Fiサービスが提供されています。特別車の整備が完了したのち、現在では一部の一般車への設置も進んでいるので、車両によってはWi-Fiの有無が差別になっていない車両もあります。→2023年より、コスト面での影響か、一般車のWi-Fi設備が停止されています。
【特別車両券・指定席券なし】一般車の車内と比較
一般車(乗車券のみで乗ることができる車両)は通常、3号車〜6号車・8号車に設定されます。内装はこんな感じ。
首都圏の鉄道などとは異なり、一部転換式のシートもありますが、地下鉄と同じようなロングシートもあり、特急の車内というよりは一般的な通勤列車という感じの内装。
仕事の関係で遅い時間帯に特急に乗ることがあるのでその時に撮りました。一宮から国府宮という、時間にして3分足らずの間だけ1両誰もいなかったので!
こんな感じのロングシートもあります。ここは地下鉄に近いけれど地下鉄などよりはふかふかで快適です。1時間以上の長時間の乗車があり得るので快適性も意識しているのでしょう。
2000系(ミュースカイ)・2200系(一部特別車)の特別車の車内
設備については新幹線と同じ感じです。しかし、新幹線と違いコンセントがありません。また、喫煙ルームもありません。お手洗いは、新幹線と同様広々としたお手洗いがあります。
「一部特別車」として運転されているのはこの2つです。中部国際空港開業に伴いデビューした車両と、名鉄ならではの全面パノラマ座席がついた車両です。
ここからは写真付きでご紹介していきます。まずは2200系、中部国際空港開業とともにデビューした車両です。全車特別車の「ミュースカイ」として運転される列車も車内は同じです。
中部国際空港開港は2005年です。当時から座席等は変わっていません。2015年には追加で増備されていますが、増備された編成も基本的には変わりません(一般車の車内ディスプレイなどに一部変更があります)。
座席はこんな感じ。新幹線よりちょっと分厚くてふかふかか、といった感じ。昔の「パノラマスーパー」などは、特別車に限って床がカーペット敷になっていて快適だったんですが現在では特別車も全車両カーペットではなくなりました。
リクライニングも倒れますが、新幹線ほどは倒れません。リクライニングの角度はかなり浅めに設定されていると思います。
テーブルの裏面にある車内のご案内です。特別車の車内にはトイレや洗面台などが備わっています。ただし、トイレは1箇所しかないことに注意(ミュースカイは2両につき1つづつあります)。
テーブルは、新幹線などと比べたら狭い。パソコン(僕のMaBook Air 13インチ)がなんとか入るくらい。食事もできなくはないですが、十分なスペースとは言い難いのが現実。
1200系 パノラマsuperの特別車の車内
続いては全面展望が特徴的な1200系「パノラマスーパー」です。名鉄では古くから走っている車両で、リニューアルも重ねながら運用され続けています。
最大の特徴が「展望席」。豊橋・河和・内海側に展望席が連結されており、前面展望を楽しむことができるようになっています(岐阜・新鵜沼方面には付いていないので注意)。
全面展望が楽しめる「展望席」はこんな感じ。展望席は通常の特別車と同一料金であり、追加料金が課されることはありません。さらに、名鉄としては展望席は昔からある「名鉄ならでは」の座席であることもあり、あえて窓口へ行かなくても購入できるようになっています(展望席がある列車では、座席選択で「窓側座席」「通路側座席」「展望席」と3つの選択肢が表示されます。さらに、座席表から選択する場合も、展望席がわかるように表示されます)。
展望席はやや空席が多かったのですが、最近(2024年9月)では土休日を中心に事前に埋まることが多くなりました。
ただし展望席については、座席にテーブルはなく座席が回転しません。そのため、岐阜・犬山・新鵜沼方面への列車では後ろ向きで走行することになります。特別車が満席になる朝夕の通勤ラッシュ時は、最後に残っているのが特別車なんてこともザラです。
座席は数年前にリニューアルされました。リニューアルによって、先ほどご紹介した2200系とほぼ同等の座席に変更されました。
座席のリクライニングは2200系と同様にあまり倒れません。また、リクライニングのボタンは座席の肘掛けのところにあります。
座席のテーブルも、2200系と同じくらいのサイズ感です。パソコン作業もできますが、パソコン1台を置いてしまうとそれで終わり、って感じ。
そして今では大いに役割を果たすWi-Fi。正直、あまり速くはありません。満席に近い状態で、多くの人が接続しているとネットサーフィンくらいしかできないこともありますが、よっぽど朝の通勤ラッシュなどでなければ、ネット動画は観られます。もともとは訪日外国人を意識したものであり、会員登録画面などは英語表記ですが日本人でももちろん利用できます。
Wi-Fiがあるのは非常にありがたい!車内設備はほとんど新幹線と同じと思って大丈夫!ただし、コンセントはないので注意。
ミューチケットのインターネット販売
名鉄では、特別車両券(ミューチケット)に限定してインターネットでの購入ができるようになりました。
名鉄のインターネット予約サービス
最近、名鉄ネット予約サービスというものが開始され、インターネットを通じてミューチケットが購入できるようになりました。僕も実際に使っていますが、非常に便利です。
例えば地下鉄から名鉄に乗り継ぐ際、地下鉄の中でささっと指定席を確保して、そのままICカードで改札を通過したりできる。チケットレスで利用できるので、かなり便利です。
支払いはクレジットカードのみとなりますが、今まで名鉄では基本的に利用することができなかったクレジットカードが利用できるというのも大きなメリットです。
最近ネット予約サービスが使えるようになった!支払いはクレジットカードのみだが、クレジットカードが使えるから便利という見方もある!
2024年3月16日から、ネット予約サービスはさらに改変
2024年3月16日にダイヤ改正が行われ、名鉄では普通運賃や通勤定期券を中心に値上げが行われます。特別車両券についても値上げが行われます。
この改定以降、特別車両券(ミューチケット)は1乗車450円と値上げになります。一方で、過去に「時差ミュー回数券」が発売されていた閑散時間帯については300円と値下げが行われます。中部国際空港を発着とする利用を除いて、平日9時台から16時台および土休日全時間帯において300円へと値下げが行われます。
また、今まで駅窓口でしか購入できなかった「乗継ミューチケット」がインターネットでも購入できるようになります。これにより利便性が大きく向上することになります。
僕は1年間、毎日指定席券(ミューチケット)を購入して通学していました。名鉄は距離に関係なく360円ですので、長距離ではかなり安いですよね。普段名鉄に乗る方で、ミューチケットを購入するのは贅沢だ、と考える方もいると思います。しかし僕は、長距離移動ではミューチケットは価値あるものと考えています。短距離で乗るのは確かにもったいないですから、本当に必要かどうかをよく考えて利用するといいですね!
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